メール連絡したい部下VSしたくない上司
よく上司が「メールに頼るな。直接会って話をしろ」といいます。
理由は、「直接話を聞かなければ細かいニュアンスは伝わらない。またメールは見ていないことも多い。見てなかったせいで滞ることもある。」
確かにメールを送ってもろくに読んでいない人もいます。しかし、ろくに読まないのは社内メール、特に部下や常に関わり合いがある人からのメールだけです。
取引先からのメールを読み飛ばすことはほとんどありません。
何故読み飛ばすかというと、甘えているからです。
送る側はあまり何も考えずに「わかってくれるだろう」と来たメールを次々転送します。受ける側も常に大量のメールが来る状況で「まぁ別にいいか」とついつい読み飛ばしてしまいます。
顧客相手にはそんな甘えたメールはしません。送る前には「誤解を与える内容になっていないか」「相手はわかってくれるか」と推敲してから送る。受ける側も来たメールは必ずゆっくり読み、返事をします。
つまり、メールによってコミュニケーションが成立しないのは、互いの関係に甘えがあるからで、甘えがあればたとえ口頭によるコミュニケーションであっても成立しません。
ではなぜ口頭によるコミュニケーションを強要するのか。
口頭によるコミュニケーションの方が都合がいいからです。
口頭による指示は履歴が残りません。多少パワハラに近いことを言っても証拠を掴まれることはありません。また、即座に返答することが大事なので、相手に論理的な言い分を言われる前にやり込めることができます。
口頭によるコミュニケーションを取る限り、上司は自分のペースで話を進めることができます。その中で多少論理的ではないことを、立場の強さを利用して強引にでも相手に呑ませることができます。
しかし、コミュニケーションツールがメールになるとそうはいきません。質問されれば、その内容をきちんと把握した上で論理的に返答する必要があります。
例えば、スケジュール上絶対間に合わず、サービス残業が確実な業務を言い渡されたとします。
口頭による指示ならば「絶対間に合いません。」とは言い出しにくいですし、もし言ったとしても、「みんなそうしている」「他の人ならできる」と言われます。「サービス残業させる気ですか」と強く言ってもだんまりを決め込みます。「やりません」とは言えないわけですから、黙っていれば最終的には受け入れざるを得ません。
しかしメールだとこうはいきません。「この業務は所定の期限内にはできません。終了させるにはサービス残業をしなければなりません。この不整合に何らかの対処をしてもらえるまで業務には着手できません」というメールが送られると、上司としては非常に困ったことになります。
本来であれば上に相談して人員を増やすようはたらきかける必要がありますが、それはしたくない。
「みんなやっている」と返信してサービス残業を強要した履歴が残るのはもってのほかです。
かといって無視したとなると、部下が一切残業せず、それによって工程が遅延しても、全ての責任は無視した上司にあります。
このような事態に陥るのを防ぐため、日頃から口頭によるコミュニケーションの重要性を強調するわけです。
こうして考えると、メールによる連絡問題は責任のなすりつけ合い言い換えることができます。
自分の言葉に責任を持ちたくない上司が履歴に残るのを嫌がり、言ったことには必ず責任を取らせたい部下がメールで連絡を取ろうとする構図です。
とすれば、部下がやるべき対処方法は、きっちりメールで送ることです。
口頭でのコミュニケーションというならば、「口頭での説明が難しい内容なのでメールを読んでください」と言えばいい。
予防線を張っておくことが、パワハラ対策の一番重要なことです。