大事なことを大事にすることは、どうでもいい事を斬り捨てることと同じ。

仕事ができる人は大事なところがどこかわかる人だと言います。
しかし、大事なところを大事にするということは、どうでもいいところを斬り捨てることと同じという意識はあまりないようです。

多くの人は、大事なところに意識があるものの、どうでもいいことを斬り捨てることができず、結果として大事なところに労力をつぎ込むことができません。
労力をつぎ込めないとなれば、大事だとわかっていても何の意味もありません。大事だとわかっていないことと同じです。

例えば。ある設計業務の担当になったが、課長から雑務を多く割り当てられ、なかなか実務に入れない。そうこうしているうちに納期が迫り、慌てて残業しながら、時にはサービス残業もしながらやっと終わらせる。しかし、スピード重視で取り組んだせいで品質はあがらず、多くの不具合を出してその解析作業と顧客への対応に追われる。

雑務より設計業務が大事なことは誰にでもわかります。しかし、雑務をやらないという選択肢を選べない故に大事な設計業務に労力を割くことができず、結局品質が落ち、企業全体として大きな損失を被ってしまいます。

こういうとき、悪いのは設計業務を割り当てたのに雑務を次々押し付けて設計を滞らせた上司です。誰にでもできる業務ならば派遣社員等にまかせるか、ただの無駄な業務ならば効率化のためになくすよう上に働きかけるのが上司の責務です。
ですがそれを直接本人に伝えても何の意味もありません。「君がやってくれないなら他の人に頼むからいいよ」などといって、「君のわがままだ」と言わんばかりの対応をします。そういうのをいちいち相手にしていてはきりがありません。

「上司はどうやったら話を聞いてくれるか」と考えるのはただの時間の無駄です。聞いてくれるためには、更に上の人を引っ張り出して加わってもらうか、ぶん殴って大声で喧嘩するしかありません。上司のこういう態度は、身内への甘えと本質的に同じなので、優しい口調で言ったところで何も変わりません。ギャンブルばかりやる夫に辞めてと言っても聞かないのと同じです。

最もいいやり方は、現実的に雑務が飛んでこない状況を作ることです。
席に居るから雑務を言われるならば、席にいる時間を極力なくし、上司がほとんど顔を出さない場所に作業スペースを作ってそこで作業するといったことです。上司というのは不思議なもので、いつもすぐ近くにいるとあれこれ雑務を押し付けますが、遠くで自分勝手に粛々と作業していると今度は本当にちゃんとやっているのか不安になってきます。「ちゃんとやってるか?」と声をかけたり、珍しく相談すると聞く姿勢を持って聞いてくれたりします。

こういうことを積み重ねて、現実的に大事なことに労力をつぎ込める環境を作っていかなければなりません。
大事なことがわかるとは、そういうことです。