経営者の考え

派遣社員が増え続けています。

経営者が派遣社員を選ぶ理由はコストの問題や他にも多くの理由があると思いますが、
今回は少し趣向を変えてみます。


経営者は人員を柔軟に変化させられることを派遣社員を増やす理由にしています。
「繁盛期には人を増やしたい。閑散期には減らしたい。」
「人員の必要な部署に人を増やしたい。多すぎる部署から減らしたい。」
前者の意見はそれなりにわかります。
しかし後者は大きな疑問符が付きます。

確かに、事業規模が大きくなると、成熟した産業から成長産業に少しずつ人員をシフトする必要があります。
しかし、そういうシフトは5年後、10年という長いスパンで起こるものです。
ゆっくりと時間があるのに人員の配置転換のための調整弁として何割もの派遣社員を雇うのは理屈にあいません。

ではなぜ経営者は派遣社員を増やしたがるのか。
トカゲの尻尾切りをやりたいのです。
経営が大きく行き詰まったとき、正社員が10割の会社では人員の削減は困難です。

しかし、5割派遣社員がいればどうでしょう。
経営者はまず真っ先に派遣切りをします。
人員が5割減れば、人件費が5割減るので一気に収支は改善します。

しかしこのやり方には決定的な問題点があります。
経営が傾いた理由は、新しい事業を作れなかったり、業務が非効率だからです。
このやり方では問題は一切解決しません。
前述の例のように5割の派遣社員を解雇すれば、そのしわ寄せは正社員に行くだけです。
真夜中遅くまで業務を行い、経営が厳しいからと残業代の請求もできません。
そもそもの問題点が解決されてないわけですから、この状態は未来永劫続きます。
そのうちに、サービス残業が当たり前の会社になり、ブラック企業化します。

大半のブラック企業はこうして生まれます。
業績が上がっていれば、残業しても残業代が払われます。
しかし、業績が落ち込んでいる時に人員を削減して残業を強いられると、残業代は支払われなくてもよくなってしまうのです。
ここ20年の間に、大半の企業は似たようなことを経験しているはずです。

普通であれば経営者の無責任な行動は大きく非難され、給与不払いとしてストライキや訴訟に発展し、企業はより決定的な打撃を受けるという報いを受けるはずです。

しかし、日本の社会では体育会系の根性論で乗り切ってしまいます。
結果、表向き経営が改善され、経営者は責任問題を問われません。

経営が行き詰まった会社がわずか半年ほどで大きな利益を上げる場合がありますが、まさにこれを実行しているのです。