製品品質の向上

製品の品質が上がらないのは、どうしてか。

誰もが悩むことですが、改善しようとしてもなかなか改善しません。

まず考えるべきは品質を決める重要なファクターは何かです。
6割は技術力、2割が工程や社内のシステム。残りの2割が検査や設計検討不十分です。

不具合が起こり、その理由を聞かれると、だいたいみんな「検討が不十分でした、検査不十分でした」と答えます。
当たり前です。「自分の技術が未熟でした」なんて言えないし、実際技術が不足しているかなんてわかりません。

しかし、これを真に受けると大変なことになります。
検査により時間をかけると人件費が膨らみますし、設計検討が不十分だから厳密に、厳格に審査しようなんてなるとただの迷惑です。
労力をかける品質対策は、工程を厳しくし、それによって設計時間の短縮を余儀無くされ、逆に品質を下げることになります。

まず第一に考えるべきことは、要因として6割を占める、技術力の底上げを図ることです。
ソフトウェアもハードウェアも、外注に丸投げしない、過去の成果物のコピペをしない、データシートやリファレンス回路をよく読むといったあたりまえのことを当たり前にこなすのです。

そしてより大事なことは、日頃からそういう技術的な業務が増えるように動くことです。

外注企業に発注する前段階で、0次試作をやって動作や特性を確認する、動作確認ソフトを作る。ログ解析ソフトを自作する。不具合があったら自分でデバッガを走らせて原因を見つける。

このように、技術的的な、それでいて品質を上げられる形で少しずつ技術が身につくように業務を行っていくことが重要です。

次に工程ですが、無駄なことを徹底的に排除することです。
無駄なことに時間を取られてしまうから、技術的な業務に時間を割くことができなくなります。

つまらないこと、めんどくさいこと、ミスが多発すること、忘れがちなこと。
この4つに無駄が含まれています。

定例ミーティングがめんどくさいと思ったら、それには一切意味がありません。
上司に報告するのが憂鬱なら報告する必要はありません。聞かれた時に「順調です」と答えればいい。
出図が面倒ならば、ワンクリックで完了するシステムを作ればいい。
文書でミスが頻繁に起こる箇所は、だいたい無駄な箇所です。日付なんてマクロで自動的に今日の日付が入るようにすればいいし、頻繁にミスが起こる項目は何書いていいかわからなかったり、同じ事を何回も書かされたり、要らないことを書かされているだけです。
忘れがちなことも同じです。自動化すれば効率的になります。

ミスをしたとき、「次はミスしないようにしよう」ではなく、「こんなミスが出るようなこと、本当はしなくていいよね」と思うことが重要です。

そして最後が設計審査や検査です。
ここで大事なのは、効率を大事にすることです。
審査のために何週間もかけて資料を作っても無駄です。
審査は「ちゃんとやってる?」「ちゃんとやってます」くらいの確認で十分です。
意見をもとめる、意見を言うといった関係でなければなりません。
そのためには設計審査の場で審査するのではなく、日頃から技術者同士で意見交換が活発な環境を作ることです。

審査で絶対にやってはいけないのは、設計者の技量を審査することです。
技術者にはその業務に携わる技量があるから業務の指示が与えられています。
その指示は、直属の常に近くで業務を見ている上司の判断です。
ですから、技術者に技術があるのは前提条件であり、審査の場に至ってその技量があるかを試すような言動を行うのは意味がありません。
それどころか設計者は、防御のために無駄で膨大な資料を用意しなければならず、効率的ではありません。そんな時間があるなら、p板で一回試作をやった方が格段に品質が上がります。

1時間品質のための業務を行えば1時間分品質が上がると思いますが、実際にはその1時間分、設計にかける時間が減り、品質は下がるのです。
品質を上げるには、下がった分を引いてさらにプラスになるだけの効果がある手を打たなければなりません。
この算数を勘違いしていると、品質対策をしているのに全く品質が上がらないということになるのです。