技術者の技術流出と引き抜き

技術者の引き抜きがと情報の流出が問題になっているようです。

USBメモリで技術情報を持ち出すのはさすがにアウトですが、違和感があります。
USBメモリに保存したデータにいかほどの価値があるのでしょうか。

日本の技術力は確かにものすごく高い。
ではその技術のノウハウがどこにあるかと言えば、それは技術者の頭の中です。
USBメモリに保存されたデジタルデータにそれが凝縮されて詰まっているなどということはありません。

技術が流出したというのは、技術者が流出したということです。
技術者が流出するのは、優秀な技術者が不当に安い賃金、待遇で働かされているからです。

優秀な技術者というのは、プロ野球で言えばエースピッチャーや四番打者です。技術力次第で10億、100億という単位で売り上げに影響します。ダルビッシュの年俸が500万だったら、メジャーに引き抜かれるのは当たり前です。

「2倍、3倍の給与を提示されて」などと言われるとお金にものを言わせて引き抜いているように聞こえますが、金額にすれば1500万とかその程度です。貢献度から考えれば妥当というか、むしろ安い買い物です。買い叩かれていると言ってもいい。

日本では貢献度の高い者がその貢献度に見合った給与を得るという風潮がありません。そのため、給与は全員が横並びにされ、技術者を引き抜くのにかかる費用は相対的に安い。

この事実が、引き抜きを誘発する大きな原因になっています。

技術力の流出を止めたいのであれば、優秀な技術を持つ技術者には、その技術力に見合った給与、待遇が保証されるシステムを作らなければなりません。

安い賃金で奴隷のように働かせて、抜け出すことが困難であったり、抜け出した者にペナルティを与えることで人材や技術力の流出を止めようとすることは、市場原理の観点からも、職業選択の自由という意味からも正しいとは言えません。

改善のためには人材の移動が活発化することです。不当な待遇を行っていれば、優秀な技術者は引き抜かれるという状況を作ることです。優秀な人材が次々引き抜かれる状況が出てくれば、技術力の低下というリスクが顕在化します。

それでもなおリスクに目を瞑り、赤信号でもみんなで渡ろうという経営をやるのであれば、その企業は潰れても仕方ありません。