大企業が優秀な学生を飼い殺しにする現実

就職活動をしていた頃から違和感があった。
面接で、「ソフトウェアをやりたい」「回路設計をやりたい」と言ってはいけないというもの。

その理由は確かこんな感じ。
「大企業は多くの子会社の上に立ってるから、実際求められているのは技術力ではなく、リーダーシップ。実際大企業に就職して回路設計やコードを書くような人はいない。」

自分はそれなりにいい大学を出て、勉強はできる。技術的な職業ならば活躍できる自信もある。
しかし、課長になるようなタイプではないし、偽りのリーダーシップを主張して、管理業務ばかり割り振られても困る。

子会社に行けば技術的な業務につけると思うが、給与面では明らかに親会社が上回っているし、親会社からこき使われるのは嫌だ。何かあった時も親会社の方が守られるだろう。そう考えるとやはり親会社がいいのではないか。

理系学生の多くは同じ疑問を持ったと思う。
いい大学を出た以上は、技術力で社会に貢献する職業に就きたい。
しかし現実としてそういう人間は全く必要とされていないというギャップ。

日本の企業は・・・・・おそらく年功序列の名残りで・・・・課長や管理系の職業ばかりが評価される。しかしこれは本当は少し変だ。
プロ野球選手を見ても、監督やコーチよりエース投手や四番打者が高い給料をもらうのは当然。
それは、チームを実際に引っ張って支えるのは主力選手だからと思う。

メーカーと呼ばれる会社で実際に引っ張って行くのは技術的なエースと呼ばれる人たちだ。プリウス
あれほど完成度が高いのも、ローソンがケーキ屋と遜色ない品質のスイーツを提供できるのも、ミラがガソリン車でリッター30キロ以上の燃費性能を誇るのも、技術者の技術力が優れているから。
そういう人にきちんと給与という形で評価をしないと、意欲は上がらない。

しかし今の企業は技術者の技術を評価する仕組みを一切持っていない。
それは就職の面接にも現れている。理系学生に本来求める必要のないリーダーシップを求め、
有名国公立大学の理系学生はほとんどがリーダーシップを偽って大手に就職し、その半分以上は技術的な業務とは到底言えないような業務・・・・・外注管理や工程管理、テスト報告書作成、会議など・・・に追われている。

ソフトウェア担当なのに、入社して5年、10年とほとんどコードを書かない者や、電気屋なのにデータシートもまともに読んだことがないような者が、大手企業にはたくさんいる。彼らは有名大学を出た超エリートだ。

では今技術力がどこにあるかというと、子会社や数人の社員で回している小さな外注企業。
おかしな話だが、そういうところで安い給料で働く社員や非正規労働者が、今一番技術を持っている。彼らは実際にソフトを書いて、データシートを読んで回路を設計し、CADで図面を書いているから。

技術者が技術力を持たないまま30、40となっていけば、その人はずっと何もできない。「その年齢でこれもできないのか」と言われるのが怖くなってより一層技術的な業務には付けなくなる。わからないことがあっても聞くこともできず、膨大なサービス残業によって会社に貢献しているとみせかけるしかない。それでも会社に残れていればましだろう。リストラされたら時給1000円の生活だ。

こうして会社に飼い殺しにされたまま若手の時期を過ごすというリスクは、大企業に就職するならかなり大きいと見ていい。
就職後も「技術一本で食って行きます」くらいのことを公言しないと技術的な業務にはつけない。実際大企業の製品はモジュール化が進んで、親会社には技術的な業務自体が少なくなっている。パソコンなどはその典型で、メーカーの技術的な業務はモジュールを買ってきて配置するくらいしかない。

この傾向がこれから先改善されることは、残念ながらないと思う。
アベノミクスにはほんの少し期待はするけれど。